ブランドリユース事業の「ALLU(アリュー)」の事業責任者・藤井和也氏を招いて行ったオンラインセッション。2年で自社ECサイトの売上を約4倍にした方法から、今注目されている顧客コミュニケーションの取り方までを語りました。

登壇者

  • 藤井 和也
    バリュエンスジャパン株式会社 リテール事業本部 ALLU推進部 部長

WEB制作ディレクターを経験した後、EC事業支援ベンダーに入社しEC構築から運用まで、クライアントと関わる全フェーズにおいてコンサルティングを遂行。

“徹底したお客様視点”からのマーケティング戦略立案・改善提案は業界問わず数多くの成功事例を生んだ

2019年1月株式会社SOU(現バリュエンスホールディングス株式会社)に小売事業責任者として入社。
現在はバリュエンスジャパン株式会社にて、ユーズド・ヴィンテージショップ「ALLU」の事業拡大を図っている。

  • 光安 紀臣
    ビジネスサーチテクノロジ株式会社 取締役 兼 営業本部長

大手総合人材会社、ネットワーク機器関連の法人営業を経て、2010年にビジネスサーチテクノロジ入社。
営業部の主軸として、大手広告代理店や製作会社等のパートナー企業と連携したサイト内検索サービス提供の推進、新規サービスの企画・提案営業を行う。2019年、同社取締役に就任。

  • 石渡 奈月
    株式会社ジーニー
    マーケティングテクノロジー事業本部 マーケティング部 マネージャー代理

2011年にウェブマーケティング事業会社に新卒入社。法人営業、CS立ち上げ、コンサルタント、自社のウェブマーケターを経験後、株式会社ジーニーに入社。
現在ではウェブマーケティングからオフラインマーケティングまで幅広く従事し、リード・商談創出に尽力している。

売上を4倍を実現したのは徹底的な「親身さ」藤井流コミュニケーションのすべて

売上を4倍を実現したのは徹底的な「親身さ」藤井流コミュニケーションのすべて

第一部では、藤井氏に売上を約4倍に伸ばした方法と、成功の要因について伺いました。

どんな施策よりも効果のあるお客様アンケート

石渡:どうやって売上を4倍に伸ばしたんですか?

藤井:前職でECのコンサルティングをしていたのですが、アリューのような一点ものの中古品販売事業に携わったことはありませんでした。

さらに、私自身これまであまり中古品を購入した経験がなく、お客様の気持ちがわかりませんでした。業界を知らないと販売戦略が取れないと思い、「なぜ買ったのか/買わなかったのか」を理解するために店舗に立ってお客様へアンケートを取りました。とにかくお客様の声を聴くことは、どんな細かい施策の成功よりも効果がありました。

中古という時点でお客様は商品に対し不安を感じます。特にECで中古品を買うなんて不安でしかない。「どこよりもアリューが安心して買える場だね」と思ってもらえれば、買っていただけるECサイトへのレールが引けるなと思いました。

売上を伸ばした秘訣をよく聞かれますが、リユース業界の特徴である「不安」を解消したのが大きかったと思います。

あえて効率化しないお客様に向き合う電話対応

石渡:「不安を解消する」ことの重要性を分かっていても実践するのは難しいですよね。具体的にどんなことをしたのでしょうか?

藤井:CS(カスタマーサポート)対応に注力しました。CSといえば問い合わせのマニュアルを作って、スタッフがスムーズに件数をこなせるようにするのが一般的だと思っています。しかし、お客様の不安を解消するのにはそのオペレーションはそぐわない。それに気づいてからは「1人のお客様に何時間でも対応してください」とCSのスタッフに伝えました。

「もっと写真が見たい」と言われたら、スタッフが商品の棚まで行ってお客様が満足するまで何枚も写真を取る。「サイズが知りたいから、あなた(スタッフ)が着てみて!」といわれたら、電話口で着心地をありのままに伝える。スタッフには「売らなくていいから事実をそのまま伝えてください」と指導し、徹底してお客様の不安を解消しました。

光安:自動化するという発想とは真逆を行っていますね。

藤井:時代の流れには逆行しているかもしれません。しかし、お客様に「親身さ」を伝えるいいきっかけになったのではと思っています。

リアル店舗でも売上を伸ばしたのは「観察」と「仮説」

光安:アリューはECだけでなく店舗の売上も伸ばしたましたが、どのような施策を行ったのですか?

藤井:心斎橋店の例でいうと、コロナ前までは9割が訪日客の売上でした。海外の方からすると日本の中古品は状態が良く、正規品が多いので人気なんです。

しかし、コロナでインバウンド需要が減り店舗の来客が激減。店舗を作った当初からインバウンド需要で、「お客様側から来ていただける状態」だったので、コロナになってはじめて日本人を呼ぶ施策を始めました。

日本人への認知が全くない状態で、下記3つの項目を始めてみました。

・VMD(Visual Merchandising)
・店前通行客数と来店者数をカメラで測定できるツールを導入し、来店率をKPIとする
・ネットで買わない層の店舗誘致

店舗運営をやっている人にとっては当たり前の施策ですが、コロナの影響で自社店舗を見直せたことは、運が良かったです。

光安:リアル店舗の売上を伸ばすコツはなんですか?

藤井:もともと私がデジタル領域の人間なので、KPIなどはとても悩みました。

ECCサイトのようにデータが溜まらないので、一番時間のある自分がお客様を観察しようと思い店舗へ行く頻度を増やしました。

仮説を立てるためにお客様の観察はとても参考になりました。

「サイネージはスライドより動画のほう反応いいな」「照明を暖色にすると気づかないな」などの気づきはすべてエバーノートにその場でまとめるようにしていました。

コミュニケーションを取るべきはお客様だけじゃない?思いを伝えるために始めた「社内ラジオ」

石渡:店頭でのアンケートや電話での徹底したお客様の不安解消など、お客様の気持ちを理解することで事業を成長させていらっしゃると感じました。「消費者理解の重要性」を社内にも浸透させるにはどのようなことを行いましたか?藤井:とにかく言い続けることが大事です。「どうやって親密さの重要性に気づいたのか?」という話を四半期に一度現場メンバーへ伝える時間を持ちました。リーダーへの浸透も重要です。「藤井の言葉はコピペでもよいのでメンバーへ伝えてください」という指導をすることで、藤井→リーダー→メンバーへとメッセージが伝搬しました。CMと同じで繰り返しメッセージを伝えることが大事。「伝えるのは難しいから…」と、諦めたら終わりですね。光安:私は昔から藤井さんとお仕事をさせていただく機会がありましたが、前職では「藤井塾」、最近は「社内ラジオ」など新しい取り組みをしていますよね。藤井:業務時間外に勉強会をやる人もいますが、私もメンバーも早く帰りたいのに勉強会はしたくないですよね(笑)。業務時間内に手を止めずにできるようにと、「社内ラジオ」を始めました。また、倉庫を移転する関係で同じチームでも店舗が異なるなど、会話コミュニケーションが難しくなったこともラジオを始めた背景です。ラジオでは、参加者はマイクとカメラをオフにして、私がひたすら話しています。事前に集めた質問に答えるコーナーも設けています。

「アリューの今後はどうなりますか」といったかなり重たい質問から、「藤井さんってどんな人なの?」という質問が寄せられます。コロナの影響で社内でもコミュニケーションが難しくなっているので、このような交流の波を作ることが大事だと思います。

ツールベンダーが考える「これからのコミュニケーション」

ツールベンダーが考える「これからのコミュニケーション」

第二部では、藤井氏からベンダー側に「コミュニケーション」をテーマにした質問を受けました。

ツールの良さを生かしながら、リアルに近いコミュニケーションを実現していく

藤井:今後コミュニケーションが重要になってくる中でツールベンダーとしての役割はどう変化していくと思いますか?

光安:ビジネスサーチテクノロジではサイト内検索ツール「probo(プロボ)」を提供しています。最近はどのメディアでも「コミュニケーションの重要性」が注目されていますよね。

検索はECサイトの中でのコミュニケーションツールです。検索ワードは「お客様の本音」。これまでは、検索された意図を汲んで、その内容を返すことが私たちの役割でした。

緊急事態宣言解除で「リアル店舗の良さ」が再認識されています。実際に手にとって、店員におススメを聞いて、自分が知らなかった商品に出会う。リアル店舗で体験できる「提案力」がECにはありませんでした。

検索ツールはお客様が「欲しい商品」をそのまま提供していましたが、これからはお客様が「欲しがる商品」を提案できるようになりたいと思っています。検索のパーソナライズにチャレンジしながら、いかに店舗の対応をECで再現できるか?を模索しています。

石渡:弊社ではチャット型Web接客プラットフォームの「GENIEE CHAT」を提供しています。チャットは店舗でのコミュニケーションをECで実現するためのツールです。これからはツールベンダーとして、お客様データの蓄積と、より高度な分析が提供価値として求められると思います。

藤井:実は弊社もチャットボットをテスト運用していたのですが、リソースが足りず辞めてしまいました。「チャット=すぐ返事が来る」と思っているお客様に対応しきれなかったです。

石渡:こういう課題を持たれるEC事業者さんは非常に多いです。有人コミュニケーションではなく、チャットを工数削減のためのFAQ対応に活用したり、申込フォームをチャット化させるCVR向上施策(チャットEFO)に活用する企業が増えています。

ECサイトがより良い購入体験の場となるには?

ECサイトがより良い購入体験の場となるには?

コロナ前後を経験し「人の温かさ」と、「デジタルの便利さ」を実感した人が多いのではないでしょうか。

「親身なコミュニケーション」と「ツールによる自動化」は対極に位置するように見えますが、本来人間にしかできないコミュニケーションにより注力するためにツールを活用したり、よりリアルに近い接客ができるようにツールが進化したりしていくことで、ECサイトは今後お客様にとってよりよい購入体験の場となることでしょう。

※本セミナーで紹介したツールは下記からお問い合わせいただけます
チャット型Web接客プラットフォーム「Chamo」:https://chamo-chat.com/request/
サイト内検索ツール「probo」:https://www.bsearchtech.com/solutions/search/

GENIEE CV NAV1 編集部

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